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会議で「いつも同じ答えしか出ない」を変える:安斎勇樹・塩瀬隆之『問いのデザイン』

著者: DevBookPath 編集部公開日:

「どうすれば売れるカーナビを作れるか」という問いと、「どのような快適な移動体験をデザインしたいか」という問い——答えは同じテーマでも、思考の広がり方はまるで違う。

安斎勇樹・塩瀬隆之の『問いのデザイン——創造的対話のファシリテーション』は、「問いの立て方」が思考の幅を規定するという前提から出発し、チームの創造性を引き出すための実践的な方法を体系化している。

1. 組織を窒息させる「固定化」

停滞している組織に共通するのは、メンバーの能力不足ではなく「認識と関係性の固定化」だ、と本書は主張する。

長年の経験が「当然こうある」という枠組みを作り、新しい視点が入る余地を失わせる。同じメンバーで同じ会議をしていると、出てくる意見も似通ってくる。これは惰性でも無能さでもなく、認識と関係性が固定した状態だ。

この固定化を解くための介入が「問い」だ。問いは、注意を向ける方向を変える。答えが変わる前に、「何を問われているか」が変わると、思考の出発点そのものが変わる。

2. 「名詞の問い」から「動詞の問い」へ

リフレーミングの具体的な技法として、本書が示すのが名詞から動詞への転換だ。

  • 「どんな商品を作るか」→「どんな体験を届けるか」
  • 「何の機能を追加するか」→「ユーザーの何を変えるか」

名詞の問いは対象を固定する。動詞の問いは動きと目的を問う。後者に切り替えることで、既存のカテゴリーや製品の枠を超えたアイデアが出やすくなる。

「当初の問いを疑う」ことも本書が繰り返すテーマだ。解こうとしている問いが、本当に解くべき問いかどうかを問い直すこと——これを本書はリフレーミングと呼ぶ。

3. 5つの思考のレンズ

問いの質を高めるために、本書は5つの視点を提示している。

素朴思考: 子どものような「なぜ?」で当たり前を疑う。専門知識がある人ほど、この視点を失いがちだ。

天邪鬼思考: あえて反対や皮肉な角度から見る。「これが失敗する方が良い場合は?」という問いは思考の枠を外す。

道具思考: 今ある技術や手段から「何ができるか」を逆算する。

構造化思考: 複雑な問題の背後にあるメカニズムを整理して見る。

哲学的思考: 物事の本質を突き詰める。「そもそも○○とは何か」という問いは、自明視されているものを問い直す。

これらを一人で持つ必要はない。チームの中で異なるレンズを持つ人が対話することで、思考の多様性が生まれる。

4. 会議を「工場」から「工房」へ

効率よく正解を出す場として会議を設計すると、予定調和の結論しか生まれない。本書が提唱するのは「工房(スタジオ)」としての会議だ。

工房では試行錯誤が許容される。「まだ答えが出ていない」状態を共に支えることがファシリテーターの役割になる。この状態に耐えられないと、早まった結論に飛びついてしまう。

「答えが出ない状態を、共に支え続ける力がファシリテーターの真髄」というのは、忍耐や管理の話ではなく、思考のプロセスそのものへの信頼の話だ。


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